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ボヤキマックス

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4月26日の夜に新潟市北区にある犬を扱う業者の施設で火災があり数百頭の犬が犠牲になってしまったことはすでに多くの人が知っていることであろう。
けが人はいなかったようであるが数百頭の犬がすべて焼け死んでしまったという悲惨な事件であった。
この事件に関しては犬が死んでしまったことは大々的に報道されたが動物関係者が疑問に思うべきことに言及する内容があまり見られなかったのは残念である。
まず一つは夜間の現場には人間が一人もいなかったという点である。
これは繁殖場のみならずペットショップや多くの展示施設、保護施設なども同じであろうが「夜勤」の必要性という概念が全く無視されているところもあるのではなかろうか。
たくさんの動物がいるところにおいては人の目がない時には何が起こるかわからないゆえの対策を講じておくべきであろう。
たくさんの命を預かっているという認識の希薄さを感じざるを得ない。
火災報知器、スプリンクラー、さらには警備会社との契約等が全くなかったのであろうか?
命を守るという概念が全くなかったのであろうか?
これは動物愛護法以前の問題であるが法律を用いて動物を守るのであれば生き物を収容する施設には一定の災害対策、事故防止対策等が義務付けられてもよいような気がする。
今回は火災であったが災害大国である我が国においては極めて重要な課題であろう。
停電の際に必要な設備を動かすための対策はどうなっているのか?
空調設備による温度管理ができなくなれば死んでしまう動物種もいる。
エキゾチックなどはヒーターやランプなどが使えなければ大変なことになる。
動物たちは業者にとって「商品」であるがその商品を最適な環境に置くというきめの細かい配慮ができなければ商人としてのモラルがなさすぎると言っても決して過言ではない。
しかし今回の事件を「繁殖業者の失態」として片付けてよいものであろうか?
今回の報道でもう一つ気になったのが「ブリーダー」という言葉が用いられたことである。
ブリーダーとは自身が特定の動物種の「質」を重んじながらより理想に近づけた個体を求めて繁殖をする者たちである。
様々な犬種などを「大量生産」する者たちは英語ではパピーミル、すなわち子犬生産工場と呼ばれている。
このような者たちは「売れ筋商品」をたくさん生産することに心血を注ぐ。
また世のはやりすたれに敏感であり人気犬種・猫種などをすぐに「生産」しようとするのである。
さらには連続繁殖などは母犬に負担をかける、遺伝病などに鑑み相手などを吟味する必要がある等々の当たり前のことすら守らずひっきりなしに繁殖をすすめることもある。
そして最近では本来のブリーダーたちが長年かけて純血種の抱える問題などに目を向けて繁殖にいそしんできたにもかかわらず、繁殖業者たちは単に「可愛い」、「珍しい」などという視点から動物を購入してしまう無知な飼い主向けにやたらと「混血の個体」を作っている。
チワプーやマルぺキなどに加え大型犬種と小型犬種の繁殖までしてしまう輩がいる。
明らかに骨格や遺伝性の疾患にかかわる問題が出てきそうな個体までも大量に「生産」してしまうのである。
上述した新潟の事件に改めて目を向けるが報道された内容からまず火災を起こしたのはブリーダーではなく「繁殖業者」であることはその扱っている頭数から言えば間違いないであろう。
ずいぶん前の話であるが米国のとある人気犬種のブリードクラブの会長と仕事をする機会があったがその際に彼女に自分のブリーダー人生で何腹くらいの子犬を世にだしたか聞いてみた。
彼女の犬舎の主役はその犬種の全米チャンピオンでもあったが、私の問いに彼女は少し考えてから、三腹、いや四腹かな、と答えたのである。さらに彼女はこう加えた、「うちの男の子に見合った質の良い女の子を探すのは大変。。」。
また多くの熱心なブリーダーたちは犬だけで生活のすべてをまかなう収入を得てはいない。
ペットを飼っておられる方々はお分かりであろうが一つの命を背負うにはかなりお金がかかる。
さらにブリーダーとして良質な生活環境を親犬のために整え、安全なお産を念頭に母犬、子犬ともに健全な飼養管理体制下に置くには獣医療費を含め相当な資金が必要になるであろう。
節約のために端折る部分があり、かつ「そこまでしていたら商売にならぬ」という人々は繁殖を、動物製造業をやめればよいのである。成り立たない商売を成り立たせるために動物に負担をかけるのであればそれは許されることではない。
とここまでは生産者の非を指摘してきたが、そもそもこのような生産体制が成り立っているのは「求める者」いいかえれば消費者がいるからである。
有名な野球選手がメディア上でとある純血犬をひけらかしているために同じ犬種がどこで買えるかという問い合わせが畜犬団体にあるそうである。高層マンションで牧羊犬を飼い始めたら本来羊を追う仕事をする犬には様々な問題が起こる可能性を抱え込んでしまうかもしれないのである。
グラビアなどでその可愛い姿が取り上げられているとある猫種には骨軟骨異形成症が頻発していることは動物関係者なら皆知っていることである。
しかしこの猫種はその可愛さからペットショップに置かれ人目を引いているのである。
メディアがもう少し動物問題に対して真摯な報道をしてくれれば社会も多少は覚醒するのであろうがやはり報道は多くの人を喜ばせる動物課題・映像しか取り上げないのである。
もともと大量生産が成り立つのは消費者が大勢いるからであろう。
この点が改善されない限り今回の新潟の惨事はまたどこかで繰り返されるであろう。
最近の動物愛護法は「業者の締め付け」が厳しくなったと言われているが監視システムがうまく作動しなければ法律などのルールをいくら作っても状況は改善されない。そして求める者がいる限り作るものもいなくならない。
環境省や各自治体などはもう少し社会教育に専念するための方策を考えるべきではなかろうか。
それで飼わない人、飼えない人が増えてしまうのであれば…So Be It.


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日経新聞の記事

日経新聞の記事 2024年7月27日の日経朝刊の「医療・介護・健康」という紙面で動物介在療法などに関する大きな記事が掲載されていた。 そのタイトルが【「アニマルセラピー」に光明】であったがここですでに用語の間違いを指摘しなければならない。 アニマルセラピーという言葉はメディアなどがしばしば用いている言葉であるがこれは極めて不正確な表現である。 すでに国際学会などで取り上げられて30年以上になるが正確な表記はアニマル・アシステッド・セラピーとアニマル・アシステッド・アクティビティである。 前者の日本語訳は動物介在療法、そして後者が動物介在活動と訳されておりすでに何年もの間我が国においてもこの言葉が用いられている。 アニマルセラピーとはその両者をごちゃまぜにしたいわゆる一般社会、ひいてはメディアなどが「乱用」してきた表現である。 その意味は「動物は人を癒してくれる、気持ちを穏やかにさせてくれる、安心感を与えてくれる」等々非常にファジーなものとしてとらえられているのである。 日経の記事に話を戻すと「セラピー犬とファシリティドッグの違い」という表まで記載されているがこれもまた不正確極まりない。 参加させる犬がどのような名称で呼ばれていてもその犬がハンドラー(犬を連れていく人間)と現場においてどのようなことをするかによってそれが医療の一環、治療、であったりレクリエーション、すなわち「慰問」的なものであったりするのである。 日経の表によると「セラピー犬」は教育やレクリエーションを行う犬であり、ファシリティドッグは治療に参加する犬である、となっているがこれは明らかな間違いである。 さらに表によると活動場所もセラピー犬は高齢者施設などでファシリティドッグは医療機関となっている。 さらには「付き添い」と表記されているハンドラーは、セラピー犬はボランティアでありファシリティドッグは看護師などと書いてある。犬の育成に関しては、セラピー犬は「家庭でのしつけ」そしてファシリティドッグは「専門的な訓練」となっているのである。 どれも現場を知らない者たちの勘違いとしか言いようがない。そもそも動物介在療法と動物介在活動は犬の種類で分けるのではなく現場でどのようなことをするかによって分けられているのである。 動物介在療法とは特定の患者(訪問対象者)の治療の一環としてその患者の診断、治療目標等々が医療...

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